リノベーション工事 感想 緑道を望む住まい

高性能リノベ住宅 夏のサーモ測定と検証2023

2023/09/22

やっとやっと、朝晩に涼しさを感じられるようになりましたね。
この夏は非常に過酷な暑さが日本を覆いました。
真夏日の連続記録は過去最長となり、
国連事務総長が「地球沸騰化の時代が到来した」と発言するほどの変化が地球に訪れています。
「ひとまず過ぎ去った」厳しい猛暑ですが、おそらく 来年以降もやってくるでしょう。

これからの住まいには、過酷な夏から身体を守る 高断熱シェルター の役割が求められます。
高断熱化は高騰する電気代の省エネ対策としても大変有効です。
(少ないエネルギーで、全館冷暖房が可能になる)

実際に弊社で高断熱リノベーションを施工し、すでに居住済みの
「緑道を望む住まい」(設計者宅)の様子をサーモカメラで測定しました。

実に様々なことがわかる実例となりました。
この夏の厳しさを忘れずに、来年以降の暮らしに活かせるよう、ご参考になさってください。

■測定日

測定日は、9/17(日)
9月も半ばだというのに35℃近い真夏日。
測定には必要十分な気象条件。
時刻は11時頃。一部15時頃再測定。

■物件概要 と 測定状況
所在地:新潟県長岡市
方位 :真南から西へ40度振れています。
Ua値:0.26 W/㎡K(断熱性能を示す)
 ※国の設定する区分では等級7(最高等級)
 ※HEAT20の設定ではG2をクリア
暖房負荷:17.2kWH/㎡(Qpex)
冷房負荷:13.4kWH/㎡(Qpex)
延床面積: 90.25㎡ 約27坪
冷房設備:一般的な壁掛エアコンによる全館冷房
 2階エアコンを冷房の主体とし、1階エアコンは猛暑の際に補助冷房として使用。
 今回は2階エアコンは25℃設定(連続運転)、1階エアコン27.5℃設定としています。(1階は27℃設定にすると若干肌寒く感じたため)

1階

■実測

南側外観

真南となる向きから撮影。
南東から強い日差しが当たっています。
日射のあたる赤や白く映る外壁は 67℃近くを示します。
屋根の軒下にあたる部分や、日射の直接当たっていない南西側の外壁は40~50℃の温度分布。
日陰は大事ですねー。

興味深いのは、1階外壁のガルバリウム鋼板(ホワイト系色の鉄板!)が2回外壁の杉板材の温度より低いこと。
色調が「白か白以外か」による熱の取得具合が顕著にわかります。

1階 南東側の窓にはスダレを設置して、外部で日射熱を遮蔽しています。
スダレのかかっていない箇所と比較すると、その有用性は明確です。

南西側の様子。
軒の出のつくる温度差
玄関ポーチと、2階ベランダの「奥行」が作る温度差
それぞれが明確ですね。

この時刻、まだ日射のあたっていない北西側。
表面温度34℃前後となり、温度の上昇はありません。


玄関ポーチ。
午前中ではまだ陽射しが入り込まず、日陰の中。
青~緑~黄色の穏やかな温度分布です。
※玄関ポーチ付近は、午後に再計測しています。

玄関ホール。
(奥に見える衣類はご容赦ください)
めまいがする様な外気温から一転、一歩室内に入ると救われる様な温度環境。
概ね24~25℃程度の表面温度であることがわかります。
床付近と天井付近を比較すると、温度差は1℃程度。
直前まで家族が履いていたサンダルが熱を帯びていて、比較対象にちょうどいいですね。


玄関ホール内の窓。
簾の隙間から、わずかに差し込む陽射しが熱を持っていることがわかります。
それでも25℃程度の周辺温度に対して、30℃程度の受熱で済んでいます。

2階リビング

2階に上がると、床、壁、天井の表面温度は、25~26℃程度。
1階より約1℃程高いくらい。
「暖かい空気は上へ、冷たい空気は下へ」の定説が見て取れます。
家電(テレビ)からも発熱がある事がわかります。

そして外から直に陽射しが当たる2階LDK 南東側の窓。
日射遮蔽は、室内側の樹脂製ブラインドのみ。
窓の上部と下部が35℃近くなっていることがわかります。
そして窓下にある四角い発熱体が1か所、41℃を示しています。
これは、この物件で台所レンジフードの排気に対して外気を取り入れる「差圧給排レジスター」です。

そして比較対象に、
リビングと各室に設置された 全熱交換型24時間換気扇の給気口です。
表面温度は28℃程度。室温25~26℃に対してほぼ近い温度です。
外気温をそのまま取り入れず、特殊なフィルターを経由させることで温度湿度を中和させて新鮮空気を取り入れます。この換気設備が 外気をそのまま取り入れる第三種換気等の場合、先述した差圧給排レジスターの様な40℃近い発熱体が、各室に設けられることになります。
このサーモを見てしまうと、24時間換気設備は、全熱交換をおすすめしたいと実感しますね。


リビングダイニング南西窓

借景を望む南西窓側。
窓の上端がやや熱を持っていますが、ほぼ壁と同色(同温度)
午前中はノーダメージでしょう。
ベランダは、夏でも午前中は心地いい半外空間が過ごせそうです。

2階子ども室

ちなみに、2階のエアコン設置位置から約10m離れた位置の子ども室。
25~26℃の表面温度環境の中で、娘が爆睡しております。
(サーモ画像のみで失礼します)

玄関ポーチ_午後3時の撮影_サーモ

時刻を変えて、午後3時頃。
南西側の玄関ポーチ。奥行は1.8m。
木製玄関ドアにしっかり西日が届きます。
表面温度は50℃を示しています。

内部ではどうなっているかというと、
今回採用した木製玄関ドア。
中央部は快適温度帯ですが、周囲から30℃程度の熱が伝わっています。

そして、玄関ドア隣のトリプルガラスサッシは
ロールスクリーン(非遮光品)があるとはいうものの、
上端がやや熱を持っているものの、全体邸には壁に近い温度分布。
ガラス面に日射が届いていないこともあるでしょうが、
断熱ドアよりも、締めた時の「引き寄せる機構」がプラスに働いている印象です。

※トリプルガラス勝手口ドアを玄関ドアに採用してもアリかもしれません。
 最近はIOTで電子錠も後付けできますしね)
 参考/SwitchBot スマートロック スマホで施錠解錠可能なオートロック – SwitchBot (スイッチボット)


■あとがき と 振り返り
様々なことが「見える化」出来た夏日の表面温度測定。
設計方針に確信を持てたことも、
今後の改良余地も見出せたことも、
有益な検証でした。

暮らしてみての夏の感想は、
・家中隅々まで快適な室温
・27坪の家を全て使い切れている
・暑くて眠れない という日はゼロ
・エアコンの設定次第で、寒く感じない様に少し注意が必要
・サーキュレーターも上手く使えば、より快適さが向上


次は降雪後に確認&レポートしたいと思います。