自然エネルギーを利用するパッシブデザインとは

前回の記事で、Ua値やC値が家の性能判断に非常に重要という話をしました。
ここまではインターネット上にもよく書いてありますし、実際その数値で企業が競い合うという状況が少しずつですが出てきました。
しかし、本当にエコで快適で経済的な家づくりはこの先が本番です。

Ua値やC値はいわば家という「ハコ」の性能です。
そのハコをどこにどの向きで置こうが、Ua値やC値は全く変化しません。
実はこの箱を置く位置や向き、つまり立地や家の向き、さらには窓の付け方などが夏冬のエアコンの電気代に大きく作用してきます。

「パッシブデザイン」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
太陽の光など自然エネルギーを上手に使い、家の中の冷暖房器具の負荷を最小限にする設計手法のことです。

例えば、冬場の晴れた日には太陽のエネルギーを充分に取り込むことができれば、エアコンによる暖房負荷は太陽のエネルギーで暖めて、足りなかった部分だけで良いはずです。
南側からの日射を得ることで、エアコンの負荷は大きく下がります。

では逆に夏はどうか?
夏は太陽のエネルギーをできる限り遮断することで、エアコンの冷房負荷を抑えることができます。

つまり、
冬場:(本来必要な熱量)ー(太陽光の入射による熱量)=(暖房負荷)
夏場:(本来必要な熱量)+(太陽光の入射による熱量)=(冷房負荷)

勘の良い人はここで「ん?」となりますね。上の計算式では冬場は太陽光の入射が大きいほど暖房負荷が下がるのに対し、夏場は太陽光の入射が小さい方が冷房負荷が下がることになります。
冬場は太陽を取り込みたいが、夏は遮断したい。

そんな上手い話が…と思うかも知れませんが、できるんです。
夏場と冬場では太陽の高さが違います。
そうすると太陽光の入射角度が変わってきますので、庇の出幅を調整することで冬は取り入れ、夏は遮ることがある程度可能になります。
他にも、光を遮ることは窓に付けるシェードや外付けブラインドなどを使えば、簡単にできるので、(そのような夏場対策がきちんととられているのならば)冬場の日射取得を優先するようなデザインが良いと思います。

冬場日射は主に南から入ります。
なので、大きな窓を南側にとり、できるだけ南からの日射を取り入れるようにします。
そうすると冬でもエアコンの暖房負荷を最小限に抑えることができます。

このような考え方を示した性能値として『年間冷暖房負荷(kWh/㎡・年)』という概念があります。
物理が得意な人は単位をみればピンとくると思いますが、単位面積、単位時間あたりの消費エネルギーですから、まさに電気代とイコールと考えても良いような指標です。

住み継ぐ家ではこの年間冷暖房負荷が最小となるような設計に力を入れています。
これは前回まで話したUa値やC値のように、断熱材の厚さをどうするとか、種類をどうするといった「力技」だけでは上手くいかない、立地や方角、まわりの建物の状況などを充分に勘案した設計です。

一つ一つの住宅は全て条件が違うため、どこから日射をとるのか、どうやって日射を遮るのか、さらにはそれにかかるコストのバランスなどもみていく必要があります。

この年間冷暖房負荷を評価指標としているエコハウスの基準があります。ドイツ発祥の世界一のエコハウス基準と言われる「パッシブハウス」です。

現在、日本にはパッシブ・ハウス・ジャパンという協会があり、当社もその会員です。
10年程前から日本でもパッシブハウスの認定を受ける物件が出始めていますが、非常に厳しい基準のためまだそれほど多くはありません。
施工事例はPHJのHPから見れます。
https://passivehouse-japan.org/ja/

ちなみに新潟県内ではいまだ0です。
それは新潟という地域が冬場の日射量が極端に少なく、最大限冬場の太陽光を取り入れたとしても、なかなか暖房負荷が下がらないことが原因です。

パッシブハウスクラスになると、地域によっては冬場は太陽の光だけで暖房し、エアコンを入れないで生活をしているというところもあるようなので、冬に曇天が続く地域に住む者としてはうらやましい限りです…。

しかしそんな新潟の地でも、冬場の日射取得をするのとしないのとでは、やはり暖房負荷は大きく違います。日射取得については窓の大きさや位置以外にも色々とノウハウがあります。

住み継ぐ家では色々なパターンでシミュレーションし、最適な冷暖房負荷をご提案しています。
冷暖房負荷から逆算して、どの程度のUa値が必要かという話になる場合もあります。

実際の住環境を想定した数値なので、最も信頼できる数値であることは間違いありません。

環境にも優しく、快適で経済的な家づくりを可能にするパッシブデザインに取り組んでいます。