家の性能をどう比較するか

皆さんは車を購入されるときに、どんなことを参考にするでしょうか?
当然、デザインや色のような見た目、また価格も大事です。
このメーカーは信頼できるといったイメージもあるかも知れません。その他に最近は燃費を意識される方が多いと思います。
経済的には燃費(ランニングコスト)と購入価格(イニシャルコスト)のバランスを意識する人が多いように思います。
仮にトータルコスト(イニシャルコスト+ランニングコスト)が高くても環境問題への取り組みから燃費の良い車を購入したいという方も少なからずいらっしゃいます。

車の場合、その比較は簡単です。
各メーカーが1リットルあたり何km走るのか車ごとに提示しています。例えばこれが「当社は燃費が良いです!」とか「環境に優しい車です!」といった文言だけだったらどうでしょうか?
一体どのメーカーのどの車が本当に燃費が良いのか、よく分かりませんね。
車を買うときに「この車は燃費が良いんですよ」と言われ、「リッターどのくらい走りますか?」と聞いた時に「何kmかは分かりませんが、とにかくエンジンが良いので燃費が良いんですよ」と返されたら「怪しい…」となってしまいますよね。

残念ながら住宅業界はこの状況にあると思います。
たまにポストに投函されているチラシを見ても「冬温かい家です」とか「高断熱高気密住宅です」とか「地震に強い家です」という話は載っていますが、その根拠となる数値を出しているところは少ないです。根拠として「樹脂サッシを使っているから」、「〇〇工法だから」、「断熱材が〇〇だから」ということを挙げているところもありますが、それはあくまで性能を向上させる方法の一つを紹介しているだけで、結果として家の性能がどの程度であるかを示しているわけではありません。
アルミやアルミ樹脂複合のサッシを使うよりも樹脂サッシを使った方が断熱上有利であることは間違いありませんが、燃費がエンジンだけでは語れないように、それだけでは家全体の性能は語れないということです。

家の性能も燃費と同じように最終的には数値で表せます。家を建てる時に抑えておきたい基本的な数値は以下です。
※厳密な定義とは少し違います。あえて分かりやすいように書いているつもりです。

Ua値(またはQ値):家全体の「熱の通し易さ」を示す数値です。
数値が小さいほど熱を通し難い(断熱性能が良い)ことを示します。

C値:家全体の隙間がどの程度あるかを示す数値です。
こちらも数値が小さいほど隙間がない(気密性が良い)ことを示します。

耐震評点:耐震性能を示す数値です。
法令基準が1.0となります。新築時の基準としてよく「耐震等級3」というものがありますが、評点1.5(つまり法令基準の1.5倍の強度)以上がそれにあたります。
耐震等級は3が最高基準です。

まずはこの3つを比較するのが良いかと思います。
さらに踏み込んだ数値として「年間冷暖房負荷」という数値(むしろこの数値こそが当社の設計で最も意識している数値ですが…)もありますが、少しややこしい(?)話になるので後日説明します。

「あとはこれらを比較するだけ!」と思いきや、そう簡単にはいきません。
実はこれらの数値、会社のHPなどを探しても探しても見つからない!という事が多々あると思います。
そうなんです。実は公表(計算も?)していないことが多いんです。
「Ua値やC値は出していないけれど、とにかく冬あったかい!」ではやはり根拠に乏しいですよね。

Ua値もC値も巷では「この数値より良ければ高性能!」という基準がありますが、それも正直疑問を感じるレベルです。
また、計算条件の基準がバラバラで、自社にとって都合の良い条件で計算しているという場合もあります。

これらは日本の住宅性能に関する法令上の基準が非常に低く、またその開示に関する厳格な基準と義務化が遅れていることに原因があると思います。
住む人の事を考えたら、本当は法令レベルでもっと高い基準を示す必要があると思います。