リノベーション探訪

リノベーション探訪 vol,2 mAAch ecute

2024/02/28

今回のリノベーション探訪は、県外編。
東京都千代田区にある 『mAAch ecute (マーチ エキュート)神田万世橋』です。

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【物件概要】
物件名:mAAch ecute 神田万世橋
所在地:〒101-0041 東京都千代田区神田須田町1丁目25−4
建築年:1912(明治45)年 ※初代駅舎
改修年:2013(平成25)年 
設計 :東日本旅客鉄道東京支社 ジェイアール東日本建築設計事務所  みかんぐみ
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■立地情報
JR秋葉原駅から歩いてすぐ。

わたしが訪れたのは昨秋でしたが、すれ違う人の半分は外国人観光客な印象。
インバウンドすごい。。

■以前の建物 と リノベーションまでの経緯

を さらっとご紹介。
元の建物は、旧万世橋駅。1912 (明治45)年建築。
東京駅がターミナル駅として機能するまでの7年間は、万世橋駅がターミナル駅の役割であった。
Beforeとなる駅舎内写真の資料として、素晴らしいページがありました。
パノラマジャーニー』さまHPより。
Googleインドアビューのよりも美しい写真です。

その後、1923年の関東大震災。
さらにすぐ近くに秋葉原駅が開業し、万世橋駅は休止。
その後、駅跡地を活用しようと 1948(昭和23)年から70年間、交通博物館として改修・利用されていたが、施設の老朽化などを理由とし2006(平成18)年に閉館。

2013年、赤レンガ造りの万世橋高架橋を活かし、商業施設 兼 観光スポットとしてリノベーションが完成。

建物の見どころ は、
①アーチ内部に連なる商空間 と
②展望デッキ&デッキへ上がる階段 です。


■建物の外観

ベースとなる建物は、
1912(明治45)年に完成した万世橋高架橋。

秋葉原駅から歩いてくると、神田川沿いに赤レンガ造りのアーチ連なる全体造。
植物が程よく被覆し、「mAAch」の赤いロゴがパキッと良い感じ。

一旦高架下をくぐり裏側へ。

高架橋には塗装修繕が施された記録が。
きちんと定期的なメンテナンスがあったからこそ、残ったのだなぁと何故かココでしみじみ。

裏通り。
ライティングされたショップ看板が並ぶ。
各店舗へ直接入ることができます。
店舗は、開業時から多少の入れ替わりがある様で、
以前はブルーボトルコーヒーなどもあったらしい。

近くで見ると、煉瓦造りの躯体を下から支える様に鉄筋コンクリートで補強している様子がわかります。

周辺オフィス街のニーズを反映してか、今や全国人気の生姜醬油ラーメンのお店が。
新潟県長岡市民は食いつくポイント。(入りませんでした)



1階の内部空間構成と店舗配置。


■建物の内部へ

内部へのメインアプローチ。
黒く、そして徐々に絞られた開口部が、内部への期待感をそそります。

建物長手方向へのメイン動線。
内部に連なるアーチを潜り抜けながら、各商空間を歩きます。
連なるアーチが、非日常空間へのワープホールにも感じられる。

今は店舗数はほどほどで、「JAPAN ART BRIDGE」と題して気鋭のアーティスト作品が展示されています。


個人的に気になったのは、建築足場を使用した可動式、解体可能な茶室。

建物の設計趣旨である、煉瓦(1912~)とコンクリート(改修時)の新旧素材のコントラストが、建物自体(遺構)の歴史を意匠的に強めている事がわかります。

さらに展示される現代アートは、遺構が作る空間と相性良し。

神田川側。
一面がガラス張りで、景色を切り取ります。

訪問時に営業していなかったレストラン。
アーチから覗くだけで絵になります。
フレーミングって大事。

建物中央部には、万世橋駅の歴史を伝えるギャラリー。
トイレブースが近代的なガラス壁面で、新旧をより印象的に。

鉄道好きになってしまいそう。。。笑

■いざ 展望デッキへ

展望デッキへ上がるために、裏通りに一度出ます。

階段入口。
てっぺんに無作為に這えた植物がまた良い感じ。
デッキに上がるには「1912階段」「1935階段」という2つの階段が動線になっています。
どちらも、つくられた年代を示す数字が名前に付いています。

その言葉通り、どちらの階段も約100年前から存在して
沢山の人たちが利用した場所。
確かな「時間の堆積」が感じ取れます。



階段を上がり切ると、「2013プラットフォーム」展望デッキ。
ガラス張りのデッキからは行き交う列車を眺めたり、神田・秋葉原の街並みが見渡すことができます。(※電車は止まりません)
ひらがなで表記された「まんせいばし」が、昔の風景を想像させてくれます。
デッキにはカフェレストランも併設されています。

帰りには、1階の川沿いに設置された親水デッキを通って。
人がすれ違える程度の幅感がちょうどよい。

日が暮れて照明が点くと
万世橋と共に
ノスタルジックな雰囲気で美しいです。

■おわりに

築111年を超える建築物には、
しっかりと時間が積み重ねられていました。

新築では得られない質感は
新旧の素材対比でより美しく。

「戦前から存在する」という事実が、
誰かの父、母、祖父、祖母を思い起こさせる様な
「町の想起点」になっている印象でした。

建物を残すことの意味を考えさせられたリノベーション事例。
鉄道好きな方も、そうじゃない方も、
ぜひご訪問くださいませ。


~関連リンク~
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★mAAch ecute万世橋ホームページ
mAAch マーチ エキュート 神田万世橋|楽しいことがキュ~っと詰まっている駅、エキュート (ecute.jp)

★パノラマジャーニー様 旧万世橋駅舎
https://www.panorama-journey.com/pano/p20060222_mb/

★JAPAN ART BRIDGE
https://japanartbridge.com/

★みかんぐみ様 事例ページ

★建築リノベーションアーカイブ